EEの科目が決まったら(科目選びにはこちらの記事を参照)、次に待っているのが「研究トピック選び」という大きな壁です。
- 「興味のある分野がEEのテーマになるのかわからない」
- 「評価されるトピックってどんなもの?」
- 「学術的な興味ってどう見つければいいの?」
そんな悩みを持つIB生に向けて、この記事ではEEの研究トピックをどうやって決めるかを解説していきます!
Extended Essay(EE)って何?どのように評価されるの?
Extended Essay(EE)は簡単に言うと、IBの卒業論文。
IBのディプロマ・プログラム(IBDP)のコア要素(TOK、CAS、EE)の一つで、生徒が主体的に取り組む、英語で4000語(日本語の場合は8000字)の研究論文です。内容も形式もアカデミックな基準が求められ、リサーチペーパーの入門とも言えます。
どうやって評価されるの?
EEは、下のような観点で評価されます。
- 知識と理解:トピックや用語、研究手法をどれだけ理解しているか
- 応用と分析:どんな研究手法で、どんな分析をしているか
- 統合と評価:議論の展開や結論の説得力、研究の振り返り
- 構成と誠実性:論文の構成や引用などの学術的なルールが守られているか
EEとTOKの成績の組み合わせによって、最大3点がIBディプロマのスコアに加算されます。
EEのトピック決めの心得3つ
EEのトピックは、評価基準を満たす必要があるため、簡単には決められません。ただし、以下の3つの心得を意識して考えていくと、良いトピックに近づけます。
① 自分の興味とIBの要件を重ね合わせる
長期的に取り組むEEでは、好奇心が何よりの原動力となります。自分の関心があるテーマを選ぶことで、楽しく取り組むことができるでしょう。ただし、先ほどのIBの評価基準に合った学術的価値があることも必要条件です。
- 興味があるトピックにIBの知識を応用して、評価されるレベルの学問性があるか?
- 興味をそそられると同時に、学術的な分析・考察ができるテーマか?
②適切な広さのトピックにする
EEのテーマはちょうどいいスコープである必要があります。テーマが広すぎると焦点が定まらず、表面的な内容になってしまいます。一方、狭すぎると使える情報や資料が足りなくなり、字数が足りなくなってしまうかもしれません。IBで習った内容を活用しつつ、自身のIBの知識を応用できる難易度で、4000語ほどで調査・分析ができる範囲にテーマを調整しましょう。
③深い探究ができるトピックにする
EEは単なる情報の説明ではなく、原因や影響を掘り下げる、分析的なリサーチクエスチョン(研究課題)が求められます。探究的な視点を忘れずに、良い答えを書けるような質問を選定しましょう。
さらに大事なのは、きちんと分析ができる文献や資料があるかどうか。テーマが面白くても、裏付けとなるデータや先行研究が不足していると深い考察につなげにくくなります。特に最新すぎる話題はまだ研究が少なく、信頼できる情報源を見つけるのが難しい場合もあります。
EEの科目別トピック例:良い例と避けたい例
EEの科目別トピック例を解説していきます。どんなものがいいかのイメージをわかせてみましょう。
言語系
良いトピックの例:『ペルーの女の手紙』は、17世紀のフランス社会に対してどんな批判をしており、それは当時の読者にどう受け取られたのか?
- この問いは、一つの作品に絞って、その中の社会批判に注目しています。「当時の読者がどう受け取ったか?」という問いによって、歴史的背景や当時の価値観も考える必要があるので、深い探究ができます。EEでは、すでに誰かが書いたことをまとめるのではなく、「自分なりの問いを立てて、自分なりの考察をする」ことが求められるので、この問いはぴったりです。
避けたいトピックの例:『ペルーの女の手紙』の主人公はフェミニズム的に問題があるか?
- 「フェミニズム的に問題があるか」という問いは抽象的で評価基準もあいまいです。EEで求められている分析や根拠のある考察をするために、個人的な視点だけでなく、研究者としての視点を持ち、「どうしてそうなっているのか?」と問いながら資料や作品に基づいて考えることが大切です。
サイエンス系
避けたいトピックの例:気候変動の影響は?
- これは広すぎるトピックの例です。気温上昇、海面上昇、生態系への影響、人の健康や経済への影響など、扱える範囲が広すぎて、焦点が絞れません。そうすると、情報をただ並べるだけの浅い研究になってしまい、自身の分析を深めることが難しくなります。
良いトピックの例:過去50年間において、気候変動は自然災害の頻度や深刻さにどれほど影響しているのか?
- この問いは気候変動の影響の中でも自然災害という一つの側面に焦点を絞っています。「どれほど影響しているか?」という問いは、具体的なデータを使って分析したり、原因と結果の関係を考察したりすることが求められます。EEで高く評価される、具体的なデータや研究を使って自分なりに調べ、考え、結論を出すプロセスに合致しています。
アート系
避けたいトピックの例:現代アートの主な特徴とは?
- この問いは、特徴を列挙するだけになってしまいがちです。IBのEEでは、表面的な説明ではなく、分析・評価・批判的思考が重視されるので、こうした問いは避けるべきです。
良いトピックの例:ルネサンスアートの技法は、西洋美術の発展にどのような影響を与えたのか?
- この問いは、具体的な技術に注目し、その多角的な影響を考えるものなので、具体的な画家や作品を取り上げて、当時の技術や芸術の考え方との関連を調べることができます。また、「どれだけ影響したのか?」という問い方によって、他の要素(宗教、時代背景、文化など)との比較もでき、深い考察がしやすくなります。
ステップでわかる!研究トピックの立て方
Step 1:興味がある分野をリストアップする
気になるキーワードやテーマを自由に書き出してみましょう。リストアップしたら、その中から先ほどの心得に当てはまるトピックかどうかで絞っていきます。
Step 2:ネットで下調べ
Google Scholarなどで、リストアップしたトピックのキーワードを入れて検索をしてみましょう。先行研究や関連する論文がどの程度あるか、実験や調査は自分でも実施可能か、データや文献へのアクセスは可能かを調べることで、トピックの現実性を確認できます。
Step 3:過去のEEの例を読む
過去のEEのサンプルを見ることで、どんなテーマが選ばれているか、どう掘り下げているかが分かります。
公式サンプル一覧はこちらから → EEのサンプルを含む公式リンク集
Step 4:トピックを質問に変える
最終的にはテーマをリサーチクエスチョンの形に落とし込みます。分析的かつ焦点が明確な質問になるように、トピックの因果関係を意識しましょう。
先輩のEEトピックの選びの例
最後に、実際にBiologyのEEで評価Aを取得したIBの先輩に、どのようにトピックを決めたのかをステップごとに教えてもらいました。
Step 1
環境科学への進学を目指していたため、Biologyの研究をしたいと考えていました。好きな食べ物、動物、環境問題など、Biologyの分野で興味のあるトピックをリストアップしました。例:プラスチック分解、オランウータンの絶滅、納豆菌の健康への影響
Step 2
Google Scholarを使って、それぞれのトピックについてキーワード検索をしました。先行研究がどのくらいあるのか、自分でも取り組めそうなものはあるか、不足している部分はどこかなどを紙にメモしながら調べました。
オランウータンの研究は実際の熱帯雨林で行うような大規模なものが多く、やや難しいと感じましたが、プラスチックや納豆菌の研究はラボで実験できそうだと判断しました。
Step 3
過去のEEの例を読むと、よりテーマを絞った方が良いことが分かりました。例えば、プラスチック分解の研究なら、どの生物のどの酵素を研究するか、一つだけ選んでからどのような条件が分解に影響するかを詳しく考える必要があります。
納豆菌の研究の場合は、EEにおいて人体実験ができないというルールがあるため、体のどのシステムにどんな条件が関係するのかを考え、人体への影響を植物などのモデルで代用する方法がよく用いられているようです。しかし、私は実際に人体への影響を測りたかったため、このテーマは自分のEEには適さないかもしれないと感じました。
Step 4
トピックをリサーチクエスチョンにするため、分解酵素としてリパーゼ(Lipase)を選び、紫外線(UVライト)の条件が分解速度にどのように影響するかを調べることに決めました。
まとめ
EEは単なる課題ではなく、自分の興味や将来に直結する大事な経験です。自分の「興味」とIBが求める「学術性」のバランスを見極めて、楽しみながら探究できるテーマを見つけましょう。このブログでは、今後もリサーチ・構成・執筆など、Extended Essayの書き方をシリーズで詳しく紹介していく予定です。
「次は研究の始め方が知りたい!」という方も、ぜひまたチェックしてみてください!
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