【IB Extended Essay対策シリーズ⑥】構成・執筆・推敲のステップガイド

Extended Essay(EE)は、どれほど優れたリサーチを行っても、それを適切に表現できなければ評価につながりません。これまで積み上げてきた研究の成果を最大限に発揮するためにも、執筆のプロセスは最後の大きな山場です。

とはいえ、「こんな長い論文、どうやって書けばいいの?」と戸惑う人も多いはず。
今回は、そんなIB Diploma Programme(DP)生のために、EEを完成させる5つのステップを、先輩の実例を交えながら解説します。

Extended Essayって何?どのように評価されるの?

Extended Essay(EE)は簡単に言うと、IBの卒業論文にあたります。IBのディプロマ・プログラム(IBDP)のコア要素(TOK、CAS、EE)の一つで、英語で4000語(日本語の場合は8000字)の研究論文です。内容も形式もアカデミックな基準が求められ、大学レベルのリサーチペーパーの入門とも言えます。

EEの執筆プロセスはなぜ重要?評価との関係

EEの執筆プロセスは、評価に直結する最重要ステップです。執筆プロセスがどのように採点に影響をするのか、IBが公式に公開している評価規準を実際に見てみましょう。

評価基準    主なポイント
焦点と方法トピック、研究課題、方法論を明確に述べ ている
知識と理解研究課題の探究に使用した科目や学問領域に関連性のある研究を行っている。また、適切な用語と概念を使って知識と理解を示している。
批判的思考批判的思考スキルを使って、自分の研究を分析し評価している。
形式 学術論文として期待される標準的な形式に従っている。
取り組み研究の焦点と研究プロセスに対して主体的に取り組んだ。

これらのうち、特に太字で示した項目は、執筆の質そのものが評価に直結する部分です。

たとえば「焦点と方法」では、リサーチクエスチョンや方法論をどれだけ明確に、読み手にわかりやすく伝えられるかが重視されます。優れた研究テーマでも、文章の構成が曖昧だったり、焦点が途中でぶれていたりすると、評価が下がってしまいます。

「知識と理解」は、単に知っていることを並べるのではなく、適切な学術用語や理論的枠組みを使って自分の研究を説明できるかが問われます。そのため、専門用語の正確な使用、定義の明示、概念の一貫性など、文章表現の精度がスコアに直結します。

「批判的思考」では、データや文献をただ要約するのではなく、自分の視点から分析・評価・比較する力を文章で示すことが求められます。つまり、「書き方」こそが思考の深さを示す手段になるのです。

さらに「形式」も単なる見た目の整え方ではなく、論文としての信頼性や説得力を支える要素です。引用・参考文献の一貫性、段落構成、見出しの整理、図表の配置など、すべてが「読みやすさ」と「学術性」に影響します。このように、EEの評価基準の多くは文章をどう構成し、どう表現するかという執筆スキルと深く関わっています。EEは、「リサーチ能力」と「アカデミックライティング能力」の両方が試される課題なのです。

EEの執筆を5ステップに分解!

評価に直結する要素が多いと、書き始めるのをためらうかもしれませんが、心配はいりません。次の5ステップに沿って進めれば、迷いなく完成度の高いEEを仕上げることができます。

1. 構成を決める

EEで最も重要なのは「論理的で一貫した構成」です。EEは「情報を並べるレポート」ではなく、「問いに答える学術論文」です。そのため、構成の段階で 結論に向かう論理の流れを明確に設計することが第一歩です。

基本構成と内容

IB公式ガイドによると、EEには以下の要素を含める必要があります。

  1. 表紙ページ:タイトル、リサーチクエスチョン、科目名、語数
  2. 目次ページ:章のタイトルとページ番号
  3. 序論:背景・目的・研究の意義・アプローチ方法
  4. 本論:分析・証拠の提示・議論の展開
  5. 結論:主張の再確認・結果の意味・限界と示唆
  6. 参考文献と参考文献目録:引用したすべての資料

この枠組みを踏まえつつ、実際の章構成はさらに細かく分けることになります。構成を決める段階では、例えば「本論」といった大きなまとまりを、どのように具体的な章にしていくかを決める必要があります。章ごとにテーマを持たせて整理し、各章が少しずつ結論に向けて議論を積み上げていくように設計することが大切です。こうすることで、読者は流れを追いやすくなり、最終的な結論に到達するまでの論理が自然に理解できるようになります。

最適な構成は選択した問いによって異なるため、自分の科目やトピックの特性に合った組み立て方を考える必要があります。そこで、文系EEと理系EEではどのように構成が変わるのか、先輩の例を見ながらイメージしてみましょう。

このように、自分の教科やテーマに合わせて章構成を工夫することで、研究全体の流れがより明確になります。最初のステップでIBが求める要素を章ごとに整理しておくと、読み手にとって理解しやすいだけでなく、自分自身も研究の方向性がブレにくくなるため、論理的で説得力のあるEEにつながります。

2. アウトラインを書く

構成を決めたら、次はアウトラインを作成します。各章で「何を書くか」「どんな資料を使うか」「どう結論に繋げるか」を整理することで、全体像が一目で見えるようになります。これにより、書きながら迷う時間を減らし、論理の一貫性も維持できます。

アウトラインの形式は自由ですが、章ごとに目的と主要な論点を簡潔にまとめておくと良いでしょう。キーワード中心でも短文でも構いません。実際に文章を書き始めるハードルを下げられるように、自分が一番整理しやすい形でOKです。実際に先輩がどのようなアウトラインを作っていたのか、序論のアウトラインを例を見てみましょう。

アウトラインの例(序論)

  1. 導入
    1. 研究テーマになぜ興味を持ったのか、個人的な問題意識や疑問
    2. 研究課題・この研究を通じて明らかにしたいこと
    3. 研究の科学的・社会的意義
      1. 環境問題や社会的影響の統計
      2. 研究結果がどのように実生活や産業に応用可能かの説明
  2. 文献調査
    1. 背景トピック1の説明・本研究との繋がり
    2. 背景トピック2の説明・本研究との繋がり
    3. 仮説の背景となる理論の説明
    4. 類似研究の説明・結果
  3. 仮説
    1. 結果の予想
    2. 結果の予想をどのように科学的に説明できるか
    3. 仮説の根拠

3. 執筆

アウトラインが完成したら、いよいよ執筆です。

EEの執筆では、まず書いてみることがコツです。多くの人が「どこから書けばいいかわからない」と悩みますが、最初から完璧を目指す必要はありません。文章は書きながら整えていくものです。書き出しに迷う場合は、「結果」や「分析」など、すでに手元にデータがある章から始めるのもおすすめです。文章の流れを掴みやすく、序論・結論を書く際の方向性も自然に見えてきます。

また、各段落では論理の筋道を明確に示すことが求められます。「トピック文→証拠→分析」という流れを意識しましょう。特に分析の部分では、専門用語の正確な使用が重視されます。

一旦書き終わったら、字数を削る作業に入ります。この作業こそが、自分の主張を研ぎ澄ませるプロセスになります。先輩もこのように語っています。

主張を全部紙とかに書いて広げた上で、つながらない箇所、つながりが弱い箇所、つながりはするけど効果的ではない箇所という順で消していきました。字数内に収まるまで削りました。

2023年卒・Geography EEを執筆

重複していてくどく感じる文章や、細かく長々と説明されすぎている文章を簡略化してみる(文章数を減らす・複数の文章を合わせてみるなど)。書かなくても意味が通じる部分、必要のない形容詞や形容動詞、副詞などを省いたりする。

2022年卒・Economics EEを執筆

4. 推敲と改善

EEは一度で完成しません。
数日あけて読み返すことで、論理の抜けや表現の不自然さに気づけます。

ステップ4-1)内容と構成の見直し

  • 主張と根拠のつながりが明確か
  • 各章がResearch Questionに貢献しているか
  • 論理の流れに矛盾がないか

ステップ4-2)文体と表現の修正

  • 専門用語の定義を補足
  • 繰り返し表現を避ける
  • 声に出して読んで、自然な流れか確認

ステップ4-3)フィードバックをもらう

  • 先生:内容・論理・IB基準の視点
  • 同級生・家族:読みやすさの視点
  • ツール:Grammarlyなどで文法・語彙を確認

5. 最終チェック

提出前には必ず内容だけでなく、形式など目につきやすい箇所の最終チェックを行いましょう。具体的には、以下のポイントをチェックしてみましょう。

  • フォーマット:フォント、行間、ページ番号などIB指定を確認しましょう。
  • 引用と参考文献:MLA / APA / Chicago など引用スタイルを統一し、引用漏れがないように注意しましょう。
  • 語数:付録・参考文献を除いて4000語(日本語の場合は8000字)以内になっているか再度確認しましょう。

まとめ

執筆作業はEEの集大成であり、最も時間と労力を要するステップですが、ここを乗り越えればあなたの研究は形となります。EEでは、リサーチの内容だけでなく、その表現力や論理的な文章構成も評価の重要な要素です。専門用語の適切な使用や、説得力のある表現を身につけることは、大学以降の学術活動や日常の論理的思考にも活かせるスキルです。

このブログでは、テーマ設定・リサーチ・構成・執筆など、Extended Essayの書き方をシリーズで詳しく紹介しています。次は、「EEの採点規準」や「EEの入試での活かし方」を知りたいという方も、ぜひまたチェックしてみてください!

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